本質に導かれて書いた物語—「猫とプール」

ある文章講座で、「猫・東・プール」というお題をもとに物語を書く課題が出されました。
不思議なことに、私は頭で考えるよりも早く、手が勝手に動き出し、物語がスラスラと生まれていったのです。

後日、友人がその物語を読んで「これって、あなたのシャーマンとしての在り方そのものじゃない?」と言いました。
猫は、まるで私自身を象徴しているかのようだったと——。

そのとき私は、これは自分で書いたというより、
何かに導かれて書かされたような感覚だったことに気づきました。
きっと私は、“本質”に導かれながら書いていたのだと思います。

誰の中にも、言葉にならない“何か”を感じ取る瞬間があります。
それは、深いところにある“本質”が、そっと語りかけてくるような時間。
そしてその“本質”は、私たちの内側にある創造の源。
そこに触れたとき、物語は自然とかたちを持ち始めます。

「猫とプール」は、そんな本質の声に導かれて生まれた物語です。
もしよかったら、私のシャーマニックな物語として読んでみてください。
本質に触れる、静かなひとときとなりますように。

「猫とプール」

 私(猫)のご主人様はとてもやさしい方です。私を本当の家族と思って接してくれます。だから私は毎日幸せな日々を送っています。ご主人様は独り暮らしですが、私が話し相手になってくれているのでさびしくないと言ってくれます。

 ご主人様の職業はプールの掃除屋です。彼はありとあらゆるプールを掃除します。私はいつも彼の仕事場までついていきます。なぜかというと私にも大切な仕事があるからです。彼が掃除した後のプールを猫目線でチェックして、汚れが残っている箇所を教えてあげているのです。

 今日の依頼主は町一番のお金持ちであるミスターXです。ミスターXは気難しい人でも有名で誰にも心を開こうとしません。そのためか数人の使用人以外に人の出入りはなくさびしい感じのお屋敷です。長い間使用されていなかったと思われるプールは荒れ放題になっていました。私もご主人様もいつも以上に気合をいれて掃除にとりかかりました。

 掃除も終わろうとしている時、私はミスターXがこちらをみつめる視線にきづきました。彼はプール際に静かに佇んでいました。私はとっさにご主人様のもとにかけよりました。「ミスターXは恐い人ではないよ。本当はさびしい人なんだ。このままそっとしておいてあげよう。」とご主人様は私に言いました。それから毎日、私たちはミスターXに呼ばれるようになりました。私たちがきれいにしたプールは翌日にはなぜか元の荒れた状態にもどっていました。ご主人様は何も言わずにその荒れたプールをきれいに掃除していきました。ミスターXはそんな私たちの様子をきまって静かにながめていました。

 ある時、ミスターXは私たちに話しかけてきました。「自分が心を閉ざしたばかりに大切な人たちを失ってしまった。私は君たちのおかげで大切なものを思い出すことができたよ。」と彼は大粒の涙を流しました。

 その時東の方からやわらかい光がさしてきました。ミスターXはその光の方へ歩いて消えていきました。私たちは掃除の手を止めその場を去りました。

 私は本来の役目を思い出していました。それはこの世に心を残す人たちの魂のプールをきれいにしてあげることでした。魂をきれいにして彼らを光の向こうへ旅立たせてあげるお手伝いをしていたのです。たくさんの想いを残してこの世を彷徨っている魂がいます。ご主人様と私はそういった魂に呼ばれて大切な何かを思いださせるためのお手伝いをしてあげていたのです。

 私はこの役目をまた忘れるでしょう。また光をみたら思い出すかもしれませんが、今日もご主人様と私はプールを掃除しにいってきます。

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